「終わった人」橋下徹の首相待望論をブチ上げるプレジデント本誌が導く永田町百鬼夜行
【連載】「コップの中の百年戦争 ―世の中の不条理やカラクリの根源とは―」
■本人や周辺の期待がどうかは分かりませんが、完全に「終わった人」扱いに…
惜しむらくは、決定的に日韓関係が悪化した徴用工訴訟問題および海上自衛隊レーダー照射事件(ともに2018年)以降であれば、韓国批判の文脈も込みで橋下徹さんの発言も許容されることもあったろうとは思います。その点では、橋下徹さんは時代の先を行き過ぎて、結果として女性層からも無党派層からも「安定感を欠く」「清潔感がない」というマイナス評価と共に2015年の「大阪都構想」(大阪市における特別区の設置についての投票)で大阪市民から僅差で否決されて、従前の宣言通り政界から(一時)引退することになるのであります。もったいないと言えばもったいない。
思い返せば、前述した橋下徹さんにまつわる舌禍事件やセックススキャンダルのひとつでも回避するか、釈明も含めてもう少しうまく立ち回っていれば、このわずかな差で負けた「大阪都構想」はひっくり返り、大阪市に5つの特別区を設置するプロセスに進んでいたでしょう。一度は石原慎太郎さんとの行き違いで挫折に追い込まれた国政への歩みも、いまごろはもっともっと隆々たるものであったかもしれないと思うと、これで良かったのでしょうか悪かったのでしょうか。
そういう橋下徹さんはいまやタイタン所属のタレントであり、述べた通り、どの社会調査でも媒体アンケートでも首相待望論で「橋下徹」の名前が上位に出ることなどほとんどありません。政治家としては、橋下徹さん本人や周辺の期待がどうかは分かりませんが、完全に「終わった人」扱いになっています。それでも、プレジデント誌でいまごろになって麹町文子なる名義で「橋下徹上げ」記事が連発されたので、業界的にも「なんだこれ」となるわけであります。
で、その麹町文子の正体とはプレジデント編集長にこの1月に就任された小倉健一さんとその周辺のライター氏であり、何より小倉健一さんは都知事・小池百合子さんの元秘書の御仁です。プレジデント編集長就任の挨拶ページに、なぜか「元大阪市長・橋下徹さんの信頼を勝ち得た理由」とか書かれていますが、まあ、要するにそういうことです。プレジデント本誌の編集部が、ネット向けに出している記事が「プレジデント Digital」であり、そこの本誌編集長がまさか橋下徹さんや小池百合子さんの提灯記事を実名で堂々と書くわけにもいかないという謎の配慮で一橋文哉(広野伊佐美さん)をもじったペンネームを使っておるわけですね。個人的には支持政党や関係先に関わる記事ほど実名でしっかりと論評したほうが、小倉健一さんや『プレジデント』ブランドのためになるのではないか、と思うのですが。
編集長メッセージ
https://www.president.co.jp/ad/president/message/
ちなみに、このプレジデント誌ですが、こんどは最近「菅義偉 人生相談」が始まりました。なに考えてんだよ。官房長官自らがプレジデントに出てきて人様の人生にあれこれ仰っていただける素敵コンテンツに眩暈がします。もちろん、これらの動きというのは黒光り官邸の中にすき間風でも吹いているのであろう安倍晋三さんVS菅義偉さんを巡る諍いも見て取れます。この小倉健一さんが陣頭指揮を執り、せっせと橋下徹さんを政界復帰の呼び声や元上司・小池百合子推しをでっち上げて、一生懸命、アゲの風を吹かせているんですよね。さらに安倍晋三政権のコロナウイルス対策がゴミであるという議論をブチ上げて政権批判を声高に掲げる一方、誌面では菅義偉さんがのんびり人生に行き詰まった読者の人生相談に乗っているわけですから、これはもう、ウォッチャーからすればこれほど強烈な嫌味はないんですよ。わざとやってますよね。プレジデント誌は菅義偉・橋下徹のBL小説まで掲載しかねない勢いです。
『橋下徹・大阪市長はこのまま消え去るのか? 菅官房長官は放っておかないだろう』
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/43384
その菅義偉さんがかねて橋下徹さんを高く評価し、また、田崎史郎さんも意を汲んで関係について詳らかにする記事を執筆されています。私が聞き及んでいる話と概ね一致するので、田崎史郎さんの記述は正しいんだろうと思いますけれども、つまりは菅義偉さんもある程度承知の上で、政権批判を繰り広げる文書をプレジデント誌がデジタル方面に拡散させるお手伝いをしていると見ることもできます。
プレジデントDigital 麹町文子
https://president.jp/list/author/%E9%BA%B9%E7%94%BA%20%E6%96%87%E5%AD%90
皆さんもぜひこの麹町文子ことプレジデント誌編集長の小倉健一さんとその周辺の皆さんのご健筆を末永く祈りつつヲッチしていただきたく存じます。また、小倉健一さんの筆致から見える官邸内お友達情実人事の微妙な力関係や三浦瑠麗さんの行く末、さらには菅義偉さんのお膝元・横浜からのカジノ撤退を明言してしまった大手オペレーターのラスベガス・サンズ社、そして菅義偉さんが握ったのかは知りませんが検察庁法改正で無関係なのに揺れている黒川弘務東京高検検事長の未来についても、ぜひご高説を賜りながら世情を掴む望遠鏡の役割を果たし続けていただきたいと切に願っております。
末筆ながら、政界で内閣改造が取り沙汰されるたびに橋下徹さんが法相などの閣僚にサプライズ起用されるとかいちいちガセネタが流れ、内心「そんなわけねえだろ」と思いながらも下々の政治記者や週刊誌記者の人たちが事実確認に走り回らされては疲弊するという恒例行事を繰り返しています。
橋下徹さんにおかれましては、コロナ禍で講演活動が減少して大変な折に申し訳ございませんが、首相待望論とは別に一刻も早く政界復帰して物事に白黒つけていっていただきたく、吉村洋文ブームの足場固めや火の後始末、敗戦処理等々に取り組んでいただきたいと強く願っております。「おおさかとこうそう」、がんばってください。